記事一覧

地熱発電は日本を救う 2

ファイル 53-1.jpg

今日は不定期でお伝えしている「地熱発電は地球を救う」の続きです。
日本のエネルギーについて興味ある方は、前回のエントリをまずはお読み頂ければと思います。

地熱発電は地球を救う 1

僕と地熱発電との出会いは、富士山のヴォルフォースについての研究を続けていくうちにたまたま読んだ本で知ることになったんですが、調べていくうちに日本には豊富な熱資源があるのに、なぜそれを使用しないのか?という疑問を覚えました。

当然、地熱に関する研究は僕が知る以前からずっとなされていて、実際に稼動している地熱発電所も日本にはいくつかあります。
ただいずれも小規模なプラントばかりで、実用向けというよりも研究的な意味合いのものがほとんどです。

地熱発電にはなにか普及を妨げるデメリットがあるのだろうか?
こう考えた僕は、地熱発電のメリット・デメリットを洗い出してみました。

まず開発コストですが、現在世界的に主流となっているのは、もともと地表に噴出していた蒸気や地表近くで溜まっている熱水を使用してタービンを回すスチーム方式かフラッシュサイクルと呼ばれる方式になります。

これはよく温泉地なんかに行くと、もうもうと湯気が立ち昇っていたり、間欠泉と呼ばれる蒸気や温水が吹き上がる場所などがありますが、ああいった場所に直接タービンを取り付けてその圧力で電気を起こす方式のことです。
もともとある高温の蒸気を利用するだけなので非常にシンプルな構造で単価も安く、この発電方式に関してはすでに新たな開発は必要ないレベルまで煮詰まっています。

ちなみにこの発電方式を採用したプラントは世界中で稼動していますが、そのプラントの最大の輸出国はなんと日本なんです。
日本では全然普及しない地熱発電ですが、それを世界に向けて一番売っているのは日本というのもおかしな話しですよね。

日本のメーカーがつくる地熱発電プラントは発電量や発電コストがとても優れていて、世界シェアでいうと実に70%以上!!
太陽光発電は中国やドイツにコスト面で大きく遅れをとっている日本ですが、地熱発電に関しては日本の技術力は圧倒的な強さなのです。

では世界ではどのくらい地熱発電が普及しているのかというと、アメリカ、フィリピン、メキシコ、インドネシアなどの地熱大国ではどんどん普及が進んでいて、国の総発電量の1/4を地熱発電でまかなっているアイスランドやエルサルバドルなどの国もあるほどです。

ではそれらの国の電気を生み出すプラントを輸出している日本はというと、実に国内総発電量の0.3%という規模でしかありません。
完全に海外輸出向けの技術力になっているんです、もったいないことです。


開発コストの問題は、すでに世界に認められる素晴らしい技術を確立させているわけですから、少なくとも原子力発電に関する何兆円にも達する開発費に比べれば大きな問題ではありません。


では稼動コストはどうなのか?

実は地熱発電の弱点としてこの稼動コストが高いと一般的に言われていた現状があります。
しかしこれは国内に十数基しかないことや、国の規制で熱資源が集まっている国定公園内の設置が出来ない分、土地の取得に費用が掛かる点、そもそも国からの支援がまったくない時期が長かったことなどが開発コストを跳ね上げただけで、実際は燃料費が恒久的に無料なことを考えれば、原価償却が早く、発電コストは原発の比ではないくらいに安価なものだというのが最近の見解です。
日本最大の発電量を誇る大分県にある八丁原発電所の発電コストは1kwhあたり7円という低コストを達成しています。


では、発電量が少ないのが原因なのか?という疑問が次に出てきました。

日本で稼動している地熱発電で一番大きなものは、先ほどふれた大分県にある八丁原発電所で112MWです。
これは一般的な火力発電(小規模)と同等程度の発電量になります。

でも日本最大級の発電所でこの程度の発電量では、国のメイン電源になるほどのレベルではありません。
日本中すべての地熱発電所の発電量を足してみても、500MW強といったところですから、原発の1基分にも満たないのです。

しかしこれは日本の国事情がそうさせているだけであって、実は地熱発電のポテンシャル自体は本当はもっと高いのです。
ではどのくらいのポテンシャルがあるのか?

日本の地下に眠る熱資源は、調査の進んでいない現時点でも原子力発電20基相当分にあたる2400万キロワットにもなるという試算が出ています。

それほどの熱資源がすでにあるにもかかわらず、発電量が増やせない日本のお家事情とは何なのか?
その最大のネックとなっているものが法規制です。

当然ながら地熱というのは地中のマグマ溜まりに近いほうが高温が安定しています。
ところがそういった活火山のふもとというのは、日本の場合ほとんどが国立・国定公園になるんです。
国立公園内は規制があるので、発電所を置くことも、実験の堀削さえも長いこと禁止されていました。
ですから日本の地熱発電はすべてこの公園の規制がかからない枠の外にしか設置できないジレンマがあったのです。

それはつまり、ガスコンロでお湯を沸かすのに、炎の真上にやかんを置けないということです。
ちょっとコンロの炎から離れた場所に置いて、伝わってくる余熱で頑張ってお湯を沸かしていた状態、それが日本の地熱発電の現状だったのです。
それでは高出力で安価な電気を発電する事などできません。

でもその規制がようやく一部撤廃されました。

早速、多くの企業がチャンスとばかりに開発に乗り出し始め、東北や北海道、九州での計画が出ています。
また福島では270MW級の大型発電所の建設計画が決定しています。
今後も続々と地熱発電に参入する企業は増えていくと思います。

つまり現在では発電量が少ないという疑問は完全に払拭されています。


では環境面に問題があったのでしょうか?
例えば地球温暖化の原因となるCO2の発生量はどうでしょう?

しかしこれも全く問題あるレベルではありません。
地熱発電のCO2発生量は水力よりも多少多いくらい、大量にCO2を発生する火力発電を100とすると、実に1.5%程度に過ぎません。
もちろん原発よりも少ないだけでなく、地球に優しいと言われている太陽光よりも風力よりもCO2発生量が少ないのです。


こうして地熱発電というものを調べていくと、コスト的にも技術的にも環境的にもこれ以上ないくらいに日本に適合した優秀な発電システムであることが解ってきます。

にもかかわらず、なぜ国と電力会社は原子力発電を選んだのでしょうか?

何兆円という開発・研究費、建設費、補助金。
2兆円以上使っていると推測されている高速増殖原型炉もんじゅなどはスタートから40年以上経っているのに、事故ばかりでまったく実用化の目処すらたっていません。

また国の防衛面からも原発というのは大変なリスクを背負っている現実があります。

今、折りしも北朝鮮のミサイル問題が出ていますが、大陸から日本海を挟んだだけの若狭湾には原発銀座と呼ばれるほど原発14基が乱立しています。
日本を攻撃するとしたら何も核弾頭を載せたミサイルを打ち込む必要などないのです。
大陸からここの原発銀座に向けて一気に大量の中短距離ミサイルを打ち込まれたら、果たしてどの程度迎撃できるのでしょうか?
もし本当に狙われたら風下に回る京阪神、中部地区はどうなるのかと考えるととても恐ろしいです。福島事故以上の被害が及ぶことは確実でしょう。

でもこういったリスク面も当然国は判っていたはずです。
それでも原発を選んだのです。


一体、原子力発電にどんな魅力があったというのでしょうか?
また地熱発電にはどんな落ち度があったのでしょうか?


そこには日本ならではの驚きのねじれた国事情が見え隠れしているのです。
続きはまた次回です。


東京より
白石

コメント一覧

コメント投稿

投稿フォーム
名前
コメント
文字色
削除キー
 ←設定しておくことで後から削除・編集ができます
投稿キー
投稿キーには白石を「ひらがな」で入力してください(スパム対策)

smiling again